短編

□悪戯日和
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「トリック オア トリート!」




やあやあおはよう今日はハロウィンだねいえあ!




「………。」

「おいちょっ…待たんかい!」




無言のままドアを閉めようとするそいつを、ドアをがしりと掴んで妨害する。

(うわあ、嫌そうな顔☆)




「てめっ、どこの世界にコスプレした可愛い彼女をスルーする男がいんだよ!」

「………可愛い彼女」

「あ、てめェ今鼻で笑っただろ喧嘩売ってんのか上等だ買ってやらァ!!」

「俺の目の前にいんのは奇行に走った変態だけだ」

「え、それは酷くね?」




(真顔で言うな傷付く)

あんまりな棗の態度にぶすっと拗ねて見せれば面倒くさそうに溜め息をつくこの鉄火面。

ちょっと本気で傷付いたのを隠して、ばーかばーかむっつりスケベばーかと言うも、総無視されて部屋に招かれる。

いや、招くというよりこれ以上俺の部屋の前で騒ぐなと渋々感満載ではあったがまあ追い返されるよりはマシなので良しとする。




「……で?」

「うん?」

「何の用だよ」

「え、いやいやそんな」

「…。」

「え、まじで?私最初に言ったくね?ハロウィンだよハロウィン!トリック オア トリート!もっかい言おうか?Truck or Treat!!」




しっかりとR音を効かせ、英語っぽく言ってやれば、いかにもうぜぇと言いたげな表情。

いや、つうか漏れてるからね。今ぼそっとうぜって言ったよね心の声駄々漏れだからね!

(ぼそっと言うな傷付くわ!)




「…つうかチョイスおかしいだろ」

「え?何が?」

「コスプレ」

「え、何で?可愛いくね?カウボーイ」

「………。」




ものっ凄い冷たい目を向けてきた棗に再びぶすっと唇を尖らせれば、返ってくる溜め息。

(ばーかばーか、これレンタル料高いんだかんな!)




「……とりっくおあとりーと」




でもだんだん悲しくなってきて、唇を尖らせたまま視線は下へ。

(だって今日溜め息ばっか)

何が駄目だったんだろう。
私は女だからカウガールと言うべきだったんだろうか。
それとも棗は保安官の方が好きだったんだろうか。

どうせ無視されるんだろうな、なんて諦め半分で口にしたその呪文。




「…。」

「、……え」




降ってきたのは甘いお菓子でも苦い溜め息でもなくて、

甘酸っぱいきすでした。




「…え、いや…え?」




目を見開いて、変わらず平然としてる棗をガン見する。

鉄火面な彼の口元がにやりと歪んだ。

(あれ、嫌な予感)




「おい」

「…は、い?」









Truck or Treat?

(お菓子くれなきゃ悪戯するぞ)






「待っ、いやいや待とう、それは私の台詞であって…」

「だからくれてやっただろ」

「いやいやいや、えええ!?」

「コスプレした可愛い彼女をスルー出来る男はいねェんだろ」

「いやちょっ待っ、そうゆう意味じゃな、」

「うるせェ。…言ったろ?Truck or Treat」




―――悪戯が嫌ならお菓子出せよ




(な、棗さんがご乱心のようです…)

つうか私結局悪戯しかされてないんですけど!




111031
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ハッピーハロウィーン!

棗くんにそこそこ冷たくされたい(真顔)

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