ポケスぺ小説

□不遇ポケモンたちの逆襲
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「お前は……、エテボーズが」
「そうです、エテボーズのエーたろうですよ」
 確かレッドの弟子?のゴールドって奴の手持ちだったはずだ。
「お前、別に俺と違ってそんなに扱いが悪くないだろう。何で嫌になってるんだよ」
「いや、最近はご主人の相棒のポジションを卵野郎に取られた上に、リメイク版では一応進化するようになったから進化させておくか程度の出番しか貰えないようなポジションに成り下がってしまいまして……。まだリメイク版で活躍の機会があっただけ、ニョロさんの方がマシなぐらいですよ」
「確かに俺はハガネールを倒したけどさ、そのあとすぐにデオキシスに完敗だよ。そこからはレッドの石化が解けるまでミュウツーの野郎に出番を取られて、ボールの外に出る事すらできなかった。草野郎と電気鼠は出番があったのにさ」
「……」
「電気鼠以下の耐久だったせいで、レッドが弱っている時に眠りこけて、あの糞鼠に励ますポジションまで奪われてしまった。どう考えても、本来は相棒であるはずの俺の出番のはずなのに。おかげで、もう挽回できる気がしなくなっちまった」
「……すみません、俺が間違っていました」
「いや、お前も大変だったんだな」
「はい、もうサイコソーダでも飲まないとやってられませんよ」
「とにかく今日は飲もうぜ。どうせ俺たちはまともに動けなくてもご主人様は困らない程度の存在だ。動けなくなるまで飲んでやろう」
「飲むなら僕も混ぜてください……」
 暗い表情で近づいてくるのは、茶色い毛をまとった鼠。
「お前は……、イエローのラッタか」
「はい、相棒ポジションだったのに、すっかり出番を失くしてしまったポケモンその3のラッちゃんです」
「そういえば、お前も俺と同じ、電気鼠に相棒ポジションを取られたんだよな」
「はい、ご主人様が活躍した時には存在すらしなかったピカチュウにポジションを奪われて、もうどうしたらいいか分からないんですよ。別に悪い事をしたわけでも、バトルで活躍しなかった訳でもないはずなのに、何でこんなことに……」
「でもさ、お前のご主人はポケモンの考えていることが分かるんだろ。それなら、お前のなやみだって……」
「ご主人様には心配をかけないように、この悩みについては伝えないようにしているんですよ。でも、最近になって十円禿げができたりして、もうどうすれば……」
 ラッタの腹の辺りを見ると、確かに禿げている部分があった。しかしその大きさは、十円というよりも五百円というぐらい大きなものだった。
「ラッタ、お前……」
 あまりの痛々しさに、エーたろうが涙を流している。
「お前もこっちに来て飲め。レッドがたくさん置いていってくれた飲み物が、何でもあるぞ」
「じゃあミックスオレをいただきます。好きな飲み物なんですけど、最近はチュチュが飲まないからってご主人様が買わなくなったんですよ……」
 蛙、猿、鼠の三匹の、俺たち負け犬の宴はそれから何時間も続いた。
 三匹ともわかっている。ご主人が悪いわけではない。ただ、人気も実力も足りないポケモンである自分たちが悪いのだということぐらい。
 それでも過去の栄光を忘れられず、飲んで自分を忘れさせることぐらいしかできなかったのだ。
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