今日僕

□第一話
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――昨日、僕の彼女が死んだ

葬式に一人の男の子がたたずんでいた。
それが僕、

何度も何度も、写真になった彼女の顔を見ては手を合わせ、心の中で必死に彼女の死が嘘だと…
夢だと思わせるように彼女の名前を呟いた。


キラキラ光る彼女の笑顔…
思い出して…頭に浮かんで。
まるで、あの日全てが昨日のように鮮明に思い出された。



あれはある夏の日




「おーい」

彼女が死んでしまったあの“愛”と言う名前と性格がとても合う女の子。

「…?」

僕は、不自然そうに愛を見る。
愛は、手を振りながら、とても可愛い笑顔で叫ぶ。

「健ちゃんっっ!こっち!!」
“健ちゃん”と呼ばれる僕は、彼女を見て

「…。」

言葉を失った。
素直に笑う君の笑顔が眩しくて、愛しくて、僕は言葉を失った。
そう、心に思ったあの夏…




―――――パチ
目を開ければ現実を見させられてしまう。
それでも、開けてしまう僕がいる。でも、現実を受け入れる事が出来なくて直ぐに目を閉じて……
次は何があったっけ。


あれは…秋の日だ

目を閉じて勝手に現実逃避をする僕だけど。
いいよね。そのくらい

紅葉がはらはらと降り落ちてきたあの日。
愛は、笑顔で紅葉を見ていた。
自分の頬も同じくらい紅く染めて。
両手をいっぱいに広げて紅葉を採ろうとしていた愛は、やっと採れた時、すごく嬉しそうに満面の笑顔を浮かべたんだ。
こっちをみて、無言で。
それも、やっぱり眩しすぎる笑顔で。





夏…秋…と来たら冬かな。冬と言ったら雪だよな。
あの日は雪がすごく降ってた。
頭にどっさり雪のっけてはしゃいでた君。
僕は何を言ったか覚えてないけど君に言ったんだ。
その声に引かれるように振り向いた君に僕は手を伸ばし君の頭に少し積もった雪をはらった。
愛は、それに反応したのか赤い頬をますます赤らめたっけ…。


春は………
桜の中、綺麗な桜の花びらが舞っていく中、

「綺麗だね!」

そう呟いた愛が僕は一番綺麗に見えた。

君の笑顔は全て綺麗で愛しかった。







――君との全ての思い出があまりにも

綺麗すぎて
儚すぎて……





こんなにも
愛しくて――


ねぇ、愛。

思い出してしまうんだ。
君と過ごした
あの
幸せな日々を…。
 

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