海南

□君が来てくれるなら
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いきなりの雨に、軒下で雨宿り。

「あーあ、最悪。近くに何もないし…雨が止まずに、このまま帰れなくなったらどうしよう。」


ふと道の向こうに目をやると、小さな女の子とお母さんが手を繋ぎ、仲良さそうに歌を歌いながらこちらにむかってくる。



〜あめあめ降れ降れかあさんが
じゃのめでお迎え嬉しいな
ぴちぴちちゃぷちゃぷ
らんらんらんっ〜




「ふふっ可愛らしい…」


そういえば、小さいときによく家の軒先で歌ったっけ…そしたら必ずお母さんが来てくれたなぁ。



「あめあめ降れ降れ
かあさんがぁ〜…」







なーんて、歌っても誰も来るわけないか。
ガンダッシュで帰るしかないかな…



「よーい…」


走り出そうとしたとき。


「おい。」


声をかけられたような気がした。



「呼んでるだろ。」



そこに立っていたのは、幼なじみの紳一。


「な、何やってんの?!」

「今朝、おまえを見かけたときに傘持ってないなー。って思ったんでな。
ははっ。やっぱり立ち往生してたか。」

「むう。」

「そんなに膨れるな。さぁ、帰るぞ。」



差し出してくれた傘。
受け取ろうとすると、お互いの手が触れた。

紳一の手はかじかんで冷たくなっている。
この寒い雨の中、どのくらいの時間、私を探してくれていたのだろう。


「ありがとう。」

「礼を言われるほどのことなんてしてないぞ。」


って…
ははっ、紳一らしいや。








紳一が迎えに来てくれるなら、雨の日はまたここに来ようかな。




ぴちぴちちゃぷちゃぷ
らんらんらんっ。







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