海南

□気まぐれcat
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つり目、挑戦的な言動、おてんば、すばしっこい。


みんな口を揃える。


あいつは<猫>みたいだ。って……





─────






「おい、見てみろよ。あいつの目、怖くねぇ?まるで猫みたいだぜ。」

廊下ですれ違う男子がひそひそ話す。




(聞こえているのよ。その言葉。)

私はきっ!と、相手を睨んでやった。
普段、何もしてなくても恐れられるつり目は、人を睨むことにより、なお恐怖を増す。

私の目に恐れをなしたのか、そそくさと逃げてく姿は鼠のようだ。



「みんな、猫、猫ばかにして…」







───







クラスに入って席につくと、必ず話し掛けてくる隣の奴。



「よう。」

「はょ……。」

「ははは。朝っぱらから何すねてんだ?」

「牧には関係ない……。」

「おまえのことだ。どうせ、怖いって言われたんだろう。」


図星。

「うるさいっ!」




ガタガタンッと音を立て、私は牧に飛び掛かった。






しかし、その行動も勢いだけ、私よりはるかに大きな牧に難なく取り押さえつけられる。
襟の後ろを捕まれ、持ち上げられているので抵抗できない。

まるで子猫と親猫。



「恥ずかしいから下ろして!」

不敵に私を見下ろす牧の顔が憎たらしい。

「俺には適わないって認めたら、下ろしてやるよ。」
(くそ〜。)



周りからは、朝っぱらから仲いいな〜。元気だね。って声が飛びかっている。

もはや、クラスの名物。

そして、私が暴れても、牧がいるから大丈夫とみんなは安心しているようだ。







牧は私と違って犬みたいだ。


温厚な性格、みんなから慕われるほどの頼もしさ、存在感。

まるで私と正反対。






「で、早く諦めたらどうだ?」

「諦めないっ!!」

「じゃないとこのままだぞ。」


「…」


「降参したか?」





「離せっ!老け顔!!!!」



「なっ!!」



今の一撃で襟を掴んでる手の力が緩んだ瞬間、私は一目散にダッシュした。


「あっ。こら!逃げるな!」

牧の声が微かに聞こえたけど、そんなの気にしない。





───






全力疾走で着いた先は、体育館の横に生えている大きな木の下。


慣れたように木をよじ登り、腰を下ろす。



「はははっ!今頃、牧は悔しがってるだろうな。ざまーみろだ。」



しかし、冷静になって考えてみる。


謝らないで逃げた→牧は怒っている→クラスに戻ったら険悪な雰囲気→そのまま険悪な雰囲気→崩壊



「牧、気にしてるのに酷いこと言っちゃったな…」















「ーい。」





「ーこい。」






「何やってんだ!降りてこい。」



下を見ると牧の姿が。



「早く降りてこいって言ってるだろ。」


「怒ってないの?」


「怒ってたら、こんなとこに迎えに来ないだろ。」


「下に行ったら、とっちめるってことしない?」


「するかもな。」


「じゃあ、やだっ!行かない!!」


「嘘だよ。早くこい。」




下で両手を広げて待ち構える姿に何故かきゅんとしてしまった。


思わず身体が動く。
足を踏み切り、そのままジャンプした。




下で待ち構える牧に抱きつく。



「捕まえた。」

「違うよ。捕まってやったんだい。」








「何で逃げた?」


「猫は嫌なことがあると、隠れたくなるの。」


「他人の言うことは気にするな。」


「……。」


「…俺も老けてるって言われても気にしてない。」








「……ぷっ。はははっ!
思いっきり気にしてるじゃんっ!!!」


「黙れっ///」


「嘘だよ。ありがとう。」


顔が赤くなるのを隠すために、少しうつむく。
すると、よしよしと、撫でられる頭。


「なにしてんの…。」


「慰めてやってんだ。俺でよければいつでも慰めてやるぞ。」


「近くにいると、また喧嘩しちゃうよ。きっと…」


「それでもいいさ。おまえとならな。」


「いいの…?」


「もちろん。」




牧はまた頭を撫でてくれた。



「俺が可愛がってやる。」



野良猫に飼い主ができました。









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