海南
□Place
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図書館に行くとよく見かける女子がいる。
彼女は一番奥の窓際が特等席のようで、本を読み、時折窓の外を眺めてはやんわりと顔をほころばせる。
いつの間にか俺は彼女に夢中になっていたんだ。
──
その日は先生に頼まれたことがあって、たまたま図書館へ足を運んだ。
図書館はたいていテスト前に勉強したい生徒が訪れるくらいで人気が少ない。
だからこそ余計に彼女に目がいってしまった。
物静かに。しかし、一つ一つの動作が綺麗で見入ってしまう。
本をめくる仕草、髪を耳にかける仕草、憂いの表情。
いわいる一目惚れってやつなんだろう。
それからは、ただ彼女に会いたいがために時間を割いて図書館へ足を運ぶようになった。
図書館へ来てもやることといえば、勉強するか本を読むくらいだ。
何気なく本棚に並んでいる一冊の本を手に取ってみた。
(少し読んでみるか。)
1ページ目を開き、その場で読み出す。
「それ面白いですよ。」
ふいにかけられた声に驚き後ろを振り替える。
「すいません。おどろかせちゃいましたね。」
「いや…」
「この本すごく面白いんです。続編も出ててお薦めですよ。」
にっこり向けられた笑顔に思わず言葉を失う。
「最近よくいらっしゃいますよね。本、お好きなんですか?」
「あ、あぁ。君こそいつもいるな。」
そこまで本好きではないが、彼女からの質問につい嘘をついてしまった。
「本も好きなんですけど、あの窓から見える景色が素敵で図書館に通っているんです。」
こっちこっちと手招きをする彼女を追いかけ、窓側の席に腰を下ろす。
窓側へ目をやると広がる世界。
青くどこまでも続く海は太陽の光を浴びてキラキラと輝いている。
あまりの美しさに思わず息を呑む。
「すごい。」
「でしょ?図書館のこの席からだけ見える景色なんですよ。だからここは私の特等席ってことにしてるんです。」
時折、窓の外を眺めている彼女はいつもこの景色を見ていたのだ。
「君のようだな。」
「?」
「君のように綺麗だ。」
「ありがとうございます。」
はにかみながら笑う彼女の頬は赤く染まり、太陽に照らされキラキラと光っていた。
好きすぎて好きすぎてどうしようもない─────…
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「ここのことは秘密ですよ。」
「俺に教えてよかったのか?」
「私にとって特別な人だから教えてるんです。」
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