Another

□帰り道
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夏休み、練習後の帰り道は欝だ。

汗でベタベタだし、疲れてる為か家までの道程が遠い。

それでも、牧と一緒に帰れるなら、苦でもないかなー。なーんて。



「何にやにやしてんだ。」



どうやら考えていたことが顔に出ていたらしい。
ここは冷静を装っておきますか。


「何言ってんだか。気のせい気のせい。」


そうか。
と、いうような顔をして、真っすぐに向き直る。

そんな牧を見つつ、あーかっこいいなぁ。なんて思って…
ヤバイ。また顔に出そう。


「ほら。駄菓子屋着いたぞ。今日も買っていくんだろう?」



諭され、見上げる一軒家。
帰り道の途中にある小さな古ぼけた駄菓子屋は、学生にとってオアシス。
夏の暑い日にはここでアイスを買っていくのが日課になりつつあった。


「もちろん!牧は?」

「んー、今日は俺も買っていくかな。さすがに暑すぎる。」


暖簾を潜れば、一面に広がるお菓子。

「いらっしゃい。今日も2人、仲が良いわね。」

顔馴染みのおばちゃんに会うとホッとする。


クーラーボックスをあさり、私が手にしたのはソーダのアイスキャンディ。夏はやっぱりこれでしょうが!

牧は何を買うのか見ていると、おっきい手に捕まれて、クーラーボックスから顔を出すアイス。


「小豆バー…」


「む…うまいじゃないか、小豆バー。」


確かに美味しい。
だけども、牧が買ってるとなんだか。だから、老けてるって言われるんじゃないのかな…。





お店を出て、二人でアイスを頬張り歩く。

「ん〜!やっぱり、アイス最高!!これさえあれば幸せっ。」

「幸せの基準が低すぎやしないか?」

「んー」

牧の問い掛けに気にせずアイスを頬張る。
とりあえず今はアイスが大事!

「無視するな。」






ぱくっ






手を捕まれ、掴んでいたアイスは牧の口へ。
残りわずかなアイスは消えていった。



「あぁ゙〜!!!」


「無視するからだ。」





わーわー騒いでる私に止めの一撃。










「間接キスが欲しかったんだ!悪いかっ!!」








このくそ暑い日に私の体温は急上昇。アイスのように溶けてしまいそうだ。


脇目も振らずに歩き出す牧。
絶対に顔を赤くしているんだろうな。と、そこは触れずに後を追う。



「明日もアイス買おうね。」

「お、おぅ。」

声がどもってやんの。






蝉がみんみん。

照りつける太陽はジリジリ暑い。

けれど、幸せ一杯帰り道。





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