海南
□あなたといるために
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テスト週間は誰でも必死。
もちろん私も…
「ねぇ、牧〜!ここ教えて〜」
「あぁ。どれどれ?」
形よく整った眉毛がピクリと上がり、眼鏡越しの目が緩んだ。
その表情が好き。
その声が好き。
あなたの何もかもが好き。
いつも部活で忙しい牧だから、お近付きになるには部活が休みになるテスト週間くらいしかチャンスがない。
「ここはな〜……」
勉強を教えてほしいと頼んだのは自分なのに、勉強のことなど一つも頭に入っていない。
呪文のような方程式は右の耳から入り、左の耳から抜けていく。
私はただひたすらに牧だけを見てる。目、鼻、口、髪、手…とにかく牧のすべてを目に焼き付けようと必死だった。
この時間がずっと続けばいい。けれど、そう長くは続かない。
牧が教えてくれることにより解けていく問題。
その問題が解けた瞬間に甘い時間は終わるのだ。
「〜このαを二乗すると、こうなるんだ。
どうだ分かったか?」
甘い時間終了…
「うん。ありがと。」
牧ともっと一緒にいたいという思いが気難しい表情を作り出してしまう。
その表情をまじまじと見られてしまった。
「眉間に皺寄せてどうした?」
「なっ、なんでもないっ!!」
必死に笑顔を作り出す。無愛想な顔をしているなんて、教えてくれた牧に失礼だ。
機嫌悪くしちゃったかな…
「よく分からないなら、分からないって言っていいんだぞ?
なんなら、放課後にもっと詳しく教えてやろうか?」
「え…」
私が思っていたことと逆の言葉に驚きを隠せない。
「どうする?」
「うんっ!!お願いっ!!!」
私の鬼気迫る必死の返答に、分かった。って優しくうなずいてくれた。
放課後、教室の片隅で机を並べて座る二人の影。
肩が近い、少しでも動いたら触れてしまいそう…
牧の声、視線、優しい香りにくらくらする。
「ここ間違えて書いてるぞ。」
おっと!
牧の声に我に返る。
「ごめんっ!!今、書き直す。え〜と…消しゴム消しゴム…」
机の上の消しゴムに手を伸ばすと、逆からも手が出てきてお互いに触れてしまった。
私は思わずビクッと身を震わせて、手を引っ込める。
「…ごめん……」
「いや、俺はむしろ嬉しい」
えっえっ。
「こういうこと」
ノートを見開きで広げると、大きくハートを書いた。
もしかして、これって告白だよね…
高鳴る気持ちを押さえながら大きなハートの上から、私もだよ。の気持ちを伝えるために、もう一つハートを書き足した。
「てことで、これからよろしくな。」
「よろしく…」
─・─・─・─・─・─・
「教えてやるってのは一緒にいる口実だ。おまえの方が頭いいだろ。いつも学年トップ10には入ってるじゃないか…」
「私も教えてほしいってのは口実だよ。
一緒のこと考えてたんだね。」
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