海南

□夢
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「ダーンクッ!!」


バスケットゴールに向かってジャーンプ!!




ゴールにかすりもせず、着地。



「悔しい!!」

私の夢…

リングにダンクを思いっきり叩きつけること。


ミニバスをやっている時からずっと思い続けてた。


けれど、思うだけでは叶わず、いつの頃からか私の成長はピタッと止まってしまった。





(身長とジャンプ力さえあればなぁ。)

リングを見上げため息を吐く。





「おい。」


後ろを振り向けば、岩のような巨体が立ちはだかっていた。
これでもかってくらいの眼差しで見下ろされているようで、少しだけ悔しさが込み上げてくる。


「そんな身長で届くわけないだろ。おまえにゃ無理だ。諦めろ。」

意地悪に言う顔が何だか憎たらしくて、勘に触る。

「夢見て何が悪いのさっ。私は諦めないからねっ!!」

「はいはい。」

また意地悪な顔をされた。


一旦牧に背を向けたが、その場から離れない牧が気になって、日頃から思っていた疑問を投げ掛けた。

「牧って何でダンクしないの?ダンクできるくらいのジャンプ力はあるよねぇ?」


184センチっていう恵まれた身長にジャンプ力。
自分より大きな相手をブロックできるんだから、能力を生かさないなんて宝の持ちぐされだよ。

それに、牧のダンク見てみたいってのもある。


「あぁ。できないことはないぞ。」


「やっぱり!!」


「けどなぁ…
疲れるわりに普通に入れたシュートと点数は同じだからな…」


「そんな理由?!神奈川の帝王ともあろうものが。」


「あと、もうひとつ。」


「?」


「一回、ダンクに試みたことがあるんだが、リングにぶつけて突き指してな。
それ以来、やっていない。」



突き指!!!

神奈川の帝王が!!!

ださい!!ださすぎる!!!


「ぶっはははっ!!」

込み上げてきた笑いを押さえきれずに、これでもかというくらい体育館の床に転がりのたうち回った。

「ひーひひっ…腹痛いっ!!」


「ダンクできないやつに笑われたくないぞ。」


「私がダンクできたら、そんな馬鹿なことしないよ。絶対…ぷっ」


ムスッとした顔をすると、こちらに近寄ってきた。
その様子に少しびびり、腰を低くして構える。



「なによ。暴力反対。」

「違う。」




腕を捕まれ、体がふわっと浮き上がった。


目の前にはリング。

牧に抱き抱えられて、自由にならない体をどうにかしようとして一生懸命動かすが、がっちりと固定されていてびくともしない。


「やっ、ちょっ…下ろしてよ。」


「突き指しないんだろ?ダーンクって一発ぶちかませよ。」


全くもって牧の行動が読めない。もて遊ばれてる…


仕方なく持っているボールをリングに叩きつけた。

人生初ダンク。

なんだか微妙なダンク…




ダンクをし終えて、床に着地。


なんだろう。このモヤモヤした気持ちは…
阿呆らしい…阿呆すぎるでしょ……


「どうだ?初ダンクの気分は??」


「どうって言われても自分の力じゃないんじゃ、意味ないやいっ。」




「ふーん。」

あ、また意地悪な顔…くそー。


「俺といつまでも一緒にいろ。いつでもダンクできるように力になってやるから。」



えっとぉ〜…
今の言葉は告白?…だよね??

「たまにならねっ!!」

とりあえず今は気付かないふりをしておこう…。
これからどうやって気持ちを伝えていこうか。






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