海南

□君と出会えた
1ページ/2ページ




(彼だ!!)

私は直ぐ様、駆け出して声をかけた。




「この間はありがとうございました。
よかったら、名前教えてください!」


彼は優しい笑顔で微笑んで、「少し話でもしようか。」って言ってくれた。


出会いって素晴らしい。

私たちが出会ったのは、運命の悪戯なのかな…??









〜君と出会えた〜







朝の通勤ラッシュは地獄だ。

電車の中でもみくちゃにされ、着崩れするわ、圧迫死しそうだわでいいことが一つもない。


おまけに今日は階段で押されて、足を思い切り捻ってしまった。
突き飛ばした相手はどっか行っちゃうし…

立ち上がろうとするけど、全くダメ。
足首はじんじんと腫れてきて、涙目…


サラリーマンやらOLやら周りの人達は無情で、私がこんなに痛がっているのに知らん顔をして、足早に通り過ぎていく。

(みんな冷たすぎる…)

身に降り掛からないと分からない出来事。
私みたいな人がいたら、手を差し伸べてあげようと心に誓う。




あれ?
何やら向こうからデカイ色黒のサラリーマンらしき人が寄ってくる…
すごくオーラがあって怖い…

こっちに来ないで下さい。






「大丈夫か?」


(いーやー!!私だよね。私に話し掛けてるよね…)


「少し捻ったみたいなんですけど、もう大丈夫です。」

(怖い。とりあえず退散…)

無理をして足を引きずり歩き出す。とゆうか、逃げ出すってほうが正しい。



「患部は動かさないほうがいい。」


「大丈夫…で、す。」

ジンジンジン…
(痛い痛い痛い!でも怖い〜)


「まったく…」




グイッ

ふわっ



ぽすっと抱き抱えられたは、彼の腕の中。


(ぎゃー!!)

「恥ずかしい!恥ずかしいです!!
周り見てるんで下ろしてください!!」


「だめだ。意地を張るな。
とりあえず、医務室行くぞ。」


必死で身をよじるが、私の抵抗は全く効いていない。
人込みを掻き分けながら、医務室に連れて行かれる私。

仕方ない…おとなしくしていよう。と、目をつむりながら彼に身を任せた。






医務室で処置をしてもらい、少しよくなった。


その間も彼は隣にいてくれた。
特に何を言うわけでもなく、ただいるだけ。
よくよく見てみれは、なかなか男前でかっこいい。




医務室を出て、時計を確認する。
明か遅刻の時間帯…
もちろん隣にいる彼も遅刻…

学校と違って会社は自分のクビがかかってくるし、すごく悪いことをしてしまった。


「あの…私のせいでごめんなさい。
上司に怒られませんか?」


一瞬、すごくビックリしたような顔をして、溜め息を一つ。


「これでも一応、高3なんだが…」


「えっ!ごめんなさい!!」

よりによってタメ?!
見えない…


「慣れてるから大丈夫だ。」


とは言われたものの、申し訳なさで心の中は一杯だった。



「俺の学校、こっちなんだけど…」


「私は逆です。」


「足平気か?」


「最寄り駅から直ぐなんで、大丈夫です。
ありがとうございました。」



反対方向の電車に乗り、別れ別れに。



(すごく優しい人だった。怖いなんて思って悪かったな…
名前聞かなかった。また会えるといいな。)







彼のことが忘れられなくて、数週間…

やっと彼を見つけた。

近付いて大きな背中を優しく叩いた──…










あとがき→
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ