海南

□笑顔を一つ
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「そんなに見ないでもらえるかな?」


「見ないと描けないだろう。」





それはそうなんだけども…






只今、美術の授業中です。
そして目の前には牧紳一…


お互いに向かい合わせになって顔を描くってやつですよ。
高校生にもなって何故こんなことを…



牧の視線がちくちくする…

牧の目は苦手だ。
真剣な瞳は怖いくらいに綺麗で吸い込まれてしまいそう。



牧の瞳が私の目・鼻・口と視線が移ろっていく。


どきどきどきどき…


心臓に悪い。悪すぎる…




こんな葛藤をしているとも知らず、クラスのみんなは平然と作品を仕上げている。

私と牧がいる場所は異空間になっているような感じだ。あくまでも私の考えだけど…




牧の顔を描くために目線をやると、目と目がバチっと合った。

堪え切れなくなって、先に視線を外して下を向くと
「おい、目の形分からないだろ。顔を上げろ。」
ずどんと低い声。

「ふぇいっ!!」

びびって上を向いた。
恐怖だ。恐怖政治…

「なんだ。その返事は?
それに上を向きすぎだ…顎出てる。」

「うるさいなっ!!」


牧はおかしそうに声を堪えて、笑いだした。


「あ…」
バカにされたようで悔しかったけど、今の牧はいい表情。今のうちに描いちゃえっ!!

いつも真剣な牧が笑いだすと、暖かい気持ちに…。こんな一面もあるんだな。


こんな笑顔が見れるんだったら、牧の顔を描くのも悪くないかもしれない。




─・─・─・─・─・─・─・─


「笑えよ。」

「は?」

「俺はおまえの笑顔が好きなんだ。それを描きたい。」






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