海南

□幸せストロベリー
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放課後、職員室から教室へ帰ってくると、私の机の上にイチゴオレ。



明らか私のじゃない。

いったい誰の忘れ物?

見てみると、まだ封が開いていない。


教室内は私一人で、クラスメイトに誰の物か尋ねることもできない。


「もったいないな〜。

あ…そう言えば。」


私はあることを思い出した。友人が朝、ぶら下げてきたコンビニ袋にイチゴオレが入っていたのを。

忘れていったのかな…??
それならつじつまが合う。




ん〜。どうしよ…
いいやっ、飲んじゃえっ!!
もったいないので、イチゴオレを飲み始めた。



パックを両手で抱え、肘を机につき、ぼーっとしながら飲んでいると、後ろから声が聞こえた。
「イチゴオレ…」
少し擦れて低い声。

ストローをくわえたまま後ろを振り替える。





「牧くんっ!びっくりした。」



「そのイチゴオレ、俺の…」

牧くんは申し訳なさそうに、モゴモゴとした口調で話し掛けてきた。

一瞬、フリーズする。



「ご、ごめんっ!!牧くんのだなんて思わなくてっ。
明日、新しいの買って返すから!!」

「いや、いい。何も言わず置いておいた俺が悪い。」
「いや…」

「じゃあ、この残りくれ。」

「えっ。」

飲むの?だって、そしたら…脳裏にある考えが浮かぶ。

制止する時も与えず、パックに牧くんが手を付けた。手が私の手に触れたことに驚いて反射的にパックを離した。

「あ……」
力なく出た言葉が擦れる。


ちうっとストローを吸って、イチゴオレを飲む。

「あぁっ!待って、それ…」

慌てていると、次の牧くんの言葉で私の顔は一気に紅潮する。



「間接キスもらったから、お詫びはいらない。」

ふっ、と口角を上げて笑う姿に思わずドキッとしてしまった。



牧くんと私の間に流れる、イチゴオレのような甘い時間。





─・─・─・─・─・─・─・─



「牧くんがイチゴオレ好きだなんて意外。可愛いとこあるんだね。」

「おまえがイチゴオレ、好きって言ってたからな。」





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