海南
□春はそこまで
1ページ/2ページ
ぽかぽかと春の陽射しが眩しい今日この頃。
窓際にある私の席からは、桜の木が見え、蕾はもうそろそろ咲くであろうというくらいに膨らんでいる。
心地よい陽気にあくびをもらす。
(天気、気持ちー。お昼休み後の授業は眠いんだよね。)
英語の先生がする抗議はまるで子守歌。余計に眠気を誘う。
ぐるっと教室を見渡せば、頭が下がっているクラスメートが半数以上。こっくりしているクラスメートもちらほら。
それに反して、私の隣の人物は必死に授業を受けている…
その人物は眠気に臆することもなく、ひたすら黒板の文字をノートに写している。
(牧くん、偉いよなぁ〜。いつもいつも頑張って。
部活も勉強も…憧れちゃうよ。)
その姿をじっと見ていたが、さすがに眠気には勝てなかった。
(私も寝ちゃおうっ。)
机に伏せて目蓋を閉じる。
暖かい風が長い髪を揺らし、頬をかすめる。
ウトウトと気持ち良くなって、そろそろ眠りに入ろうとした時、髪を梳かれ、あらわになった頬に柔らかい物が触れた。
(ん…?)
直ぐに頭を優しく撫でられたので、眠気が一気に引いた。
顔を上げ、その主を見てみると…
「ま、牧くん?!」
びっくりして声が震える。
「すまん。起こしたか。」
「一体何を?!」
「何って?」
ははっと笑ってごまかす牧くんは、イタズラ好きなガキんちょのようだ。
「か、からかうのはやめてっ。」
「からかってないぞ。」
また、ははっと笑っていきなり耳に唇を寄せてきた。思いがけない行動にびくっと体を動かす。
「次、寝てたら唇にするからな。」
春の訪れ。
あとがき→