海南

□春はそこまで
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ぽかぽかと春の陽射しが眩しい今日この頃。

窓際にある私の席からは、桜の木が見え、蕾はもうそろそろ咲くであろうというくらいに膨らんでいる。


心地よい陽気にあくびをもらす。


(天気、気持ちー。お昼休み後の授業は眠いんだよね。)


英語の先生がする抗議はまるで子守歌。余計に眠気を誘う。
ぐるっと教室を見渡せば、頭が下がっているクラスメートが半数以上。こっくりしているクラスメートもちらほら。

それに反して、私の隣の人物は必死に授業を受けている…
その人物は眠気に臆することもなく、ひたすら黒板の文字をノートに写している。

(牧くん、偉いよなぁ〜。いつもいつも頑張って。
部活も勉強も…憧れちゃうよ。)

その姿をじっと見ていたが、さすがに眠気には勝てなかった。

(私も寝ちゃおうっ。)

机に伏せて目蓋を閉じる。
暖かい風が長い髪を揺らし、頬をかすめる。

ウトウトと気持ち良くなって、そろそろ眠りに入ろうとした時、髪を梳かれ、あらわになった頬に柔らかい物が触れた。

(ん…?)

直ぐに頭を優しく撫でられたので、眠気が一気に引いた。

顔を上げ、その主を見てみると…

「ま、牧くん?!」

びっくりして声が震える。


「すまん。起こしたか。」

「一体何を?!」

「何って?」
ははっと笑ってごまかす牧くんは、イタズラ好きなガキんちょのようだ。

「か、からかうのはやめてっ。」

「からかってないぞ。」
また、ははっと笑っていきなり耳に唇を寄せてきた。思いがけない行動にびくっと体を動かす。





「次、寝てたら唇にするからな。」






春の訪れ。










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