スター・イン・クラウド
□プロローグ
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とても巨大な塊。
それは全てを飲み込まんと猛威をふるい、何かを飲み込む度に急速なスピードで巨大化して行った。
それがとてもヤバいものだと言うことは、たとえ何も知らない赤子が見ても明白であろう。
「くそっここまでなのか!?」
それに飲み込まれないように離れながら、しかし近づこうとしていた人物達の1人が悔しそうに諦めの言葉を口にする。
その言葉に他の人物たちの顔にも徐々に諦めの表情が出て来た
「何言ってるんだ!まだ諦めるな!!」
その人物のリーダーらしき、青い髪の青年が諦めかけている人たちに気合を入れる。
しかしそれでは戦意が回復することはなかった。
それほどまでに、この状況は絶望的だと言うことだった
「まだ1つだけ方法がある!だから諦めるな!」
青年は続けて言う。
その言葉に先ほどまで諦めかけていた人たちに希望が宿る。
「俺が、命がけで『あれ』にぶつかる。そうすれば『あれ』は消える」
真剣な声色で言う。
しかしその言葉でその人たちの目の色が代わる
「待て!そんなことをすれば死ぬかもしれぬのだぞ!それをお主は分かっているのか!」
この中の唯一の女の、赤い髪をした人が今にも青年に掴みかからん勢いで青年を叱咤する。
「ああ分かってる!分かってるよ!けど今はこれしかねえ!これをやるしか世界を救う方法はねえんだよ!」
まるで己の中にため込んでいる全ての感情を吐き出すかのように大きな声で叫びながらいう。
その声は酷く震えていて、情けなくも思える。
しかし同時に力強く、ゆるぎない覚悟が秘められ、とても頼りがいのある言葉だ。
「なあ……分かるだろ?俺1人の命と世界を天秤にかけちゃいけねえんだよ」
優しく諭すように彼女に言う。
その言葉に逆らえず、彼女は押し黙る。
青年はそれを了承と捕らえたのか、ニッと笑った。
「んじゃ、ちょっくら行ってくるわ。『絶対戻ってくる。』だから待ってろ」
今命を捨てる覚悟でぶつかるとは思えない笑みを浮かべ、そう言うと振り返り、その大きな塊へ真っ直ぐに向かって行く。
その時、青年の右目にはめられていた黒い眼帯がひらり、と地面に落ちた