スター・イン・クラウド

□始まりを告げる鐘の音
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―雨、だ……

冷たい……でも、気持ちいい……

目の前に広がるのは、なんとなく見覚えのない町並み。

ここ……どこなんだ……?

体中、あちこちが痛い……

怪我…してるのか?俺……

何で怪我したんだっけ

何でここに居るんだっけ

俺は、誰なんだっけ――





「ん……」

太陽がまぶしい。

もう朝か。起きなければ。

しかしそうは思うものの、まだベッドでごろごろして居たい気分だ。

冬の朝はどうしてこうも起きづらいものなのだろうか。

いっそ好きなだけ寝る法律でも出来ればいいのに。

そんなバカなことを考えていると、階段を上る音が聞こえて来た。

ああ、あいつだ。

うるさく言われる前に起きなきゃな…

そう思いつつ起き上がろうとはせず、起き上がる気配もなかった。

むしろもう1度寝る準備をしていた。

そんな所で勢いよく扉が開かれ、茶色いショートカットの茶色い瞳をして、セーラー服を着た少女が部屋の中へ入ってくる

「もう!龍!いつまで寝てるの!?」

そう言いながら少女はどかどかとベッドへ近づいて来る。

「んー……あと5時間……」

「そんなに寝てたらお昼じゃない!ほら、今日は病院に行く日なんだから起きて!」

「めんどいー…明日でいいじゃんー…」

「昨日も同じこと言ってた!とりあえず起きてってば!起きなかったら朝ごはん抜きだからね!」

そう言うと少女は雷のように去って行く。

さっきの少女は由紀と言い、数ヶ月前大けがをして倒れていたところを助けてもらった。

その時には自分が誰なのか、どこから来たのかなどを一切覚えておらず、面倒を見てくれることになった。

名前がないと不便だからと、龍と言う名前をつけて貰った。

凄く感謝している。

それからしばらくベッドで寝ていたが、さすがに眠気が吹っ飛んだのでのそのそと起き上がる。

青いさらさらした短髪と、赤い綺麗な瞳が布団の中から現れる。

ただ、その右目は赤ではなかった。

それは白く、中央に黄色いごぼう星が描かれていて、まるで作り物のような目だった。

でも実際はそれでちゃんと見えてはいる。

その右目に市販の眼帯をつけ、脇に置いておいたメガネをかける。

そしてベッドから降り白いYシャツとジーパンに着替える。

なんとなくだが、この服は落ち着かない。

まあもともと服のセンスがないので大して気にはしていないのだが。

着替えが終わると、適当に髪を整え下に行く。

「もう!遅い!龍!」

下に行くなり先ほどの少女が少し怒った素振りを見せながら声をかけて来た。

それが本当に怒っているのではないことを青年、龍は知っていた。

「悪い悪い、由紀」

本当に怒っているわけではないので、軽い口調で適当に謝る。

「もう……ほら、行くよ」

「ああ」

そう言って二人は家を出る。

行き先は、先ほど言っていた通り病院だ。

ここのところ、何故か龍の体調が悪く、普通に歩いているだけでも倒れてしまうことがしばしばあった。

明らかにおかしいのは目に見えているが、病院に行ってもいつも言われるのは、「異常なし」

今は、原因を解明するために病院へ通っている。

初め、青い髪と言う異常な髪の色に驚かれたが、それと体の調子の悪さとは無関係だし、今は慣れて貰っている。

体の調子の悪さで思い当たることと言えば……

龍はそっと眼帯の上から作り物のような目に触れる。

なんとなく、これが関係しているような気がする。

そんなことを考えていると、赤い髪の女性とすれ違った。

(赤い髪……?)

赤い髪を認識すると同時に、後ろを振り返っていた。

長い髪は後ろでポニーテールに結ばれていた。

顔は見えないが、後ろ姿だけでも気品があり、とても美しかった。

ついつい見とれてしまうような……そんな女性だ。

ただその服は鎧の部分が多く、腰に剣を差している変わった格好をしている。

ふと、女性が立ち止まり、こちらを見た。

青い瞳の、綺麗な顔だ

ただその目はキツく、服装の通りの剣士を思わせる

それすらも気品があり、とても美しい。

「龍?どうしたの?立ち止まって……早く行くよ?」

そんな由紀の言葉でハッと我に帰る。

「あ、ああ……」

そう返事をし、慌てて由紀のあとを追う。

今の感覚……

俺は、あの人を知っている―?

由紀の後を小走りで追いながらさっきの間隔を思い出す。

しかし、

まさかな。

今は……その程度にしか思っていなかった
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