スター・イン・クラウド

□初めの夜は至極平和に
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「よおし、白夜のヤツも戻ってきたところだし、一発パーティーでもすっか!」

先ほどまで賛同で盛り上がっていた人たちの1人、かなり大きな、とても筋肉質な体つきをしたおじさんとも言える、ひげを生やした豪快そうな人が突如、片手の拳を天に向かって突き出しながら大きな声でそう言った

「やろうやろう!今日は朝まで飲むぞォ!」

そのおじさんの隣に居た、ボーイッシュな感じのおそらくは二十歳過ぎ位であろうお姉さんが、何とも嬉しそうな表情を見せ、はしゃぎ出した

「そうと決まれば、お料理やお酒や飾り付けを用意しなければなりませんね」

白夜の近くに居た、背中から羽根の生えた光によって色を変える美しい瞳をもつ、白い髪のツインテールのおそらくは14かそこらであろう少女がにこにこと微笑んで言うと準備しに行ったのか、この場から姿を消した

「ちょ、ちょっと待てよ…パーティーなんて大袈裟だって!」

勝手に決められていくパーティーに今までぽかんとしていた白夜がばらけてパーティーの準備に取り掛かる人達に声をかけるが、その声はパーティーにより盛り上がる人たちの声により、かき消された。

呆れた様子でイリンが軽くため息をつくが、白夜が見てみると物凄くノリノリだった。

一瞬理解者だと思っていた白夜は、そんなイリンに落胆する

「よいではないか、白夜。ここの者達はパーティーなどの賑やかな事が大好きな上、お主が帰って来てよほど嬉しかったのじゃ」

リルが白夜の肩に手をぽん、と置きながらどことなく少し楽しそうな表情を見せて言った。

そんなものなのか。と少し腑に落ちずともなんとなく納得し、リルにお礼を言おうと振り返る

「リル、ありが……」

言葉はここで途切れた。

ほっぺたにリルの人差し指が当たったからである

そして当のリルは、まるでイタズラが大好きな子供のような笑みを浮かべ、こう言った

「引っかかった」

そして、白夜の肩から手をどかせる。

少しの間の沈黙。

「………マジか」

沈黙の後に小さな声で、そう言った。

そして誓った。いつか必ずイタズラで仕返ししてやろうと



パーティーの準備の間、主役である白夜は追い出され、自分が使っていたと言う部屋に案内された。

ちなみに案内人はイリンだ。

部屋に着いてみると、まずその広さに驚かされた。

そこはかなり広く、50人くらいなら余裕で入れそうだった。

次に驚いたのがそのノーマルさ。

広くとも高級感を感じさせない家具の模様。

普通なら絵画などがありそうなのだが、それもなく、絨毯もない。

そんな素朴なデザインがこの部屋の広さを際立たせ、より一層広く感じさせた。

一体記憶を失う前の自分はどうしてこんなデザインの部屋を使っていたのだろう。

部屋を見ていると、ふとそんな疑問が浮かび上がった

「今日からはここを使え。あと、このギルドの事について色々説明するから、そこの椅子に座っていいか?」

捕らえ方によっては冷たい。そうともとれる表情と声で部屋の真ん中にあったテーブルと椅子の椅子に触れながらイリンが白夜に尋ねる

「あ、ああ……そりゃあ、な」

イリンの言葉でハッと我に返った白夜は、曖昧な返事をし自分も慌てて椅子に座る。

その後で、イリンも白夜と向かい合う形で椅子へと腰掛ける。

「まず、このギルドはお前が作った。それは知ってるな?」

座ってからほとんど間もなく、イリンは話し始める。

「ああ。それは知ってる。リルが俺のことを『マスター』って言ってたしな」

イリンに向かって頷きながらギルドは自分が作ったのだと知っていると答える

「じゃあ、どうして作ったと思う?」

「え?」

急に予想もしなかった質問がきて、白夜は言葉を失う。

普通に考えればお金儲けをしたいから、と言うことになるだろう。

でもわざわざ問題にすると言うことは、違うと言うこと。

これ以外で思いつく理由なんて見つからなかった。

答えが見つからず、白夜が黙っていると、イリンが口を開く

「正解は、ギルドの奴らを守るためだ」

「?守るため?」

「そう。ここには特異な奴が多い。お前もその1人だ。だから悪い奴らからすると宝の山だ。
 何故特異な奴が多いかと言うと、お前がそいつらの事を知り、誘った。
 守るためにな
 そしてそのために狙われ続けた。お前はギルドを変え続け、ギルドの奴らを守り続ける。でも、ある日限界だと悟った。
 そんなお前は、自らの魔力を使い、新しい世界を作った
 土地も何もかも無骨だが、守りは万全。狙われることはなくなったよ」

長い話を終えたイリンは一息つく。

その話を聞いた白夜は、妙に納得した。

この土地の不思議な形状も、白夜が皆に慕われていて、戻ってくると泣いて喜ばれた理由も、今の話しを聞けば全て納得出来る。

でもそれは記憶を失う前の自分で、今の自分ではない。

何だか自分ではない誰かの話しを聞いているようで、イマイチ現実味がなかった

「……理解はしたけど受け入れられてない顔だな。
 まあいいさ。今のお前に過去のお前を押しつける気はねえよ」

白夜の表情を読みとったイリンが軽い様子で言う。

でもそれはどこか、投げやりな気がした。

きっと本心は白夜には元に戻って欲しいと思っているはずだ。

でも決して口には出さない。

その優しさが、白夜は痛かった

「次に、このギルドはもともと1つのパーティーから出来ている。
 初めは5人から結成されたんだが、お前がメンバーを増やしてな。いつの間にかギルドになっていた」

呆れたような口調だったが、どこか懐かしむような優しい表情があった。

「初期メンバーはお前とリル、それから俺と羽根の生えた子がいたろ?ミンタラって言って同じく初期メンバーだ」

うっすらと笑みを浮かべながら初期メンバーを教えてくれた。

ふとそこで疑問が上がった。もう1人は誰なのかと

今言った人は白夜が会ったことのある人だからなのか、それとももう1人を言いたくない何かがあるのか。

それを尋ねようと口を開きかけるが、それより先にイリンが口を開いた

「ギルドの名前は『アースイームス』。お前がつけた。
 世界の名前は、『バンドズ』
 ちなみにシステムが特徴的でな。クエストで儲けたお金は個人の儲けには反映されず、全てギルドのお金になる。
 代わりにギルドのお金を皆で自由に使う。
 だから誰かが使いすぎると皆が困る。
 そんでもって皆がだらけるとギルドが困るって訳だ」

それを聞いて白夜はなるほど、と思った

このシステムにより、お互いがお互いを養い、支え合い、また、戦えないなどの理由でクエストを受けられない人もこれにより生活出来ると言う訳だ

でも、きっとクエストを受けられずともただじっとしているわけではなく料理などを作ったりするなどしてギルドの為に動いているのだろう。

これはとてもいいシステムに思えた。

代わりに、怠けものが出てくる気がするが、さっきのギルドを見ていると、自然とそんな心配もいらない気がしてきた。

そのとき、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた
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