スター・イン・クラウド

□初クエスト
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暗い部屋。

窓は上の方に1つしかなく、それも小さい。

部屋…と言うより家全体が木で出来ていて、いつ壊れてもおかしくない程ボロボロだ。

そんな部屋の中には、大きな…そして精密そうな機械が一台あり、それからはたくさんのコードがついている。

そのコードの先には、たくさんの大きなポッドがあり、そこにたくさんの人のようなものが入っている。

皆、全く動かず死んでいるか、もしくは眠っているようだった。

そんな景色を一通り眺め、確信する。

自分は「完成」したんだ。「目的」の為に。

出来れば、完成したくはなかった。

自分も入っているポッドから出たくはなかった。

でも、もう遅い。

自分は完成した。ポッドの外に居る。

そう、作られた人形。

主に従い、ただ主の為に生き、主の為になら犠牲になる……人形。





「昨日バカ騒ぎして酔い潰れた人たちがたくさんいるから、今日は動ける人がクエスト強制だって〜♪」

昨日、白夜が大恥をかくこととなった原因の春雨が、後ろから白夜に抱きつき、すり寄ってくる。

体つきはまさに大人の女性。そしてスタイルは男の理想。

ただ、白夜はスタイルだの見た目だのに興味はなかった。

……リルは例外として。

いや、だってリルの可愛さは反則だろ

誰も何も言っていないのにそう自分に言い訳をする。

「えっと……クエストに行けないんで離れて貰えます?」

言い訳を終えた白夜が、なるべく柔らかく離れろと伝える。

しかし春雨は離れず、むしろ白夜により抱きついてきた

「もうっ私とあなたの仲でしょー?敬語何てやめてよお♪」

一体どんな関係だったのか非常に気になるところだが聞くことが恐ろしく、聞くのは止めておくことにした。

「……クエストに行けないから離れてくれ」

そして、先ほど言われた通りしぶしぶ敬語を外してさっきと同じ意味となる言葉を言う。

「誰に行ってるの〜?♪」

わざとらしくにこにこと笑顔を浮かべながら春雨はそういう。

悪気は多分ない筈。いや、ないと信じたい段階だ。

それほどまでにこの春雨の対応はイライラ感じる

と、そんな白夜に助け舟が出た

「春雨。主は今日はFランクのクエストに出て貰おうかの。このランクじゃと白夜は無理じゃ」

助け舟を出したのはリル。

何やらクエストの依頼がかかれているらしい紙を春雨に渡していた。

そしてリルの言葉を聞いた春雨は不機嫌そうな顔をするが、紙の中身を読むや否やたちまち目を輝かせた

「これ、10万Sも貰えるじゃない!しかも内容は私向き!早速言ってくるわね〜♪」

先ほどとは違い、あっさり白夜から離れ目を輝かせながら言うと春雨は鼻歌交じりにドアの方に行った。

のではなく、一階の奥にある部屋へと入って行った

「リル…春雨はクエストに行くんじゃないのか?」

その部屋のドアを見て、指を差しながら自分より少し前に居るリルに尋ねる

「ああ、イリンは説明していなかったのか。あそこはクエストに行くために他の世界へ移動出来る部屋じゃ
 お主が自分で行った世界をあの部屋のパネルを踏むとそこへ行く、そんな魔法をかけたのじゃ。
 ちなみにパネルを踏む時に場所を指定すればそこに移動するから便利での。自分でも世界を移動できる者は多いが、大抵はパネルを使こうておる」

「へ、へえ〜……」

その話を聞き、軽く引いた。自分自身に。

世界を作ったり世界を移動できるパネルを作ったり、まるで自分ではないようだ。

魔法が凄腕だったらしいが、今の自分は魔法の使い方なんて全く知らない。

この杖だってただの飾りに等しかった

「で、これがお主のクエストじゃ。安心せい、Aランクじゃ
 ちなみにランクはA〜Zまであり、Aは子供でも出来るがZは自殺行為に等しい」

そう言って紙を渡され、それを受け取る時に一瞬ぞくりとした

ランクの説明を聞かされ、そんなものがあるのかと恐怖に思ったのだ。

しかしそれに比べ自分のクエストはAランクだと言うことにすぐに落胆する。

どれだけ今の自分は期待されていないのか、と

でもいきなり難しいクエストに行かせるよりは得策だと自分を納得させ、クエストの内容を見る。

内容は、指定されたきのみをしていされた数だけ依頼者に渡すだけだった。

なるほど、これは簡単だ。

そう思い、場所や報酬を見る。

報酬は回復薬2瓶。場所は『アーリ』

と、隅から隅まで読んであることに気がつく。

「すげえ……俺、これ全部訳分かんねえ字で書かれてんのに普通に読めるぞ……」

「おそらく感覚で覚えているのじゃろう」

字が読めていると言うことに驚く白夜に、リルがあくまで冷静に言う。

見ると、他にもたくさんの紙を持っているのが見えた

「その紙…他の奴らに配るのか?」

リルの持っている紙を見ながら尋ねる。

「まあの。これからまた配るので失礼させてもらおう」

柔らかく微笑みながらそう言うと、リルは白夜に背を向け次の人の元へと向かう

手伝おうかと聞こうとしたが、どうにも聞くのが遅かったようで言いそびれてしまった

しかたがないのでさっき春雨が行った部屋へと歩いていき、ドアノブに手をかけ扉を開いた

すると、中はとても広く、外から見た敷地と全く合わないのだが、それもおそらく魔法だろう

そしておそらくは世界の名前であろうものがかかれた紙がいくつも有り、その下には白い床ではない、四角いパネルがあった

どういう分け方なのかは分からないが、それは赤、青、黄、黒、紫などなど実に様々。

全体的には無機質だが、中には白夜には理解は出来ないが、色々なものが浮き、移動し、時々どこかにおさまっては別のものが出て行く。

そして天井は目の錯覚を起こす模様なのか、何処までも高かった

由紀と居た世界ではありえない光景に息をもらし、感動する。

しばらくその光景を眺めていたが、ハッと我に帰ると慌てて『アーリ』と言う世界を探す。

しかしなにぶん量が多く、探し出すだけでも一時間ほどかかってしまい、最終的にクエストに行こうとしていた、パーティーをすると言い出した人が教えてくれた。

そこで紙に書かれている町の名前を言いながらパネルをふみ、ようやく移動することが出来たのだった
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