お嬢様と執事

□第一章
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「――先輩、やっぱりごめんなさい。お付き合いできません」
私はそう言った。

場所は、よくある校舎裏。
登場人物は私が付き合っていた先輩と私。
他の人の姿はない。

「……やっぱりね。そろそろかなって思ってたんだ」
先輩が苦笑を浮かべながら言う。
「ごめんなさい」
「いや、いいよ。こっちこそごめん。
最初に断られたときにそれでも付き合ってって言ったの僕の方だし。
いずれ僕のことを好きになってくれればいいな、って思ってたけど無理だったみたいだね」

先輩はそれでも優しい笑顔で答える。
なんか、こっちの方が申し訳なくなってしまうくらい。

「でも、もしよかったらこれからは友人でいてくれるかな?」
「あっ、はい。先輩がそれで構わないんでしたら」
「うん。じゃあ、明日から友達ってことで……」

そして、先輩は片手を差し出す。
私はその手に自分の手を重ね、握手した。
これで、3か月に及んだお付き合いはおしまい。
3か月も経ったけど、それでも、私はこの人に恋心を抱くことが出来なかった……。



校舎裏から出てくると、親友の美玖が待っていた。
「ついに断ってきたの?」
「うん……」
「もったいなかったんじゃない? 結構人気高かったのにー」
「……でも。どうしても好きになれなかったから」

「もう、春香は真面目すぎなんだよ。みんな結構なんとなくで付き合ってるのにさー」
「でも、好きじゃないのに付き合うのって相手に失礼じゃない?」
「真面目だなー、じゃあ、春香はどんな人ならいいの?」

「え?」
「今まで好きになった人いなの? どんな人なら好きになれそうなわけ?」

美玖の言葉に思わず考え込む。
別に、好きになったことがないわけじゃない。

昔、本当にずっと昔だけど、ほんのりと恋心を抱いた相手がいた。
きっとあれが初恋だったんだと思う。
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