本編
□黄金の聖職者
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「…嫌でしたら、断っても大丈夫ですよ」
「へ?そういうわけではないですよ!」
だが、聖職者様といえど、数多い質問はあまりに失礼だった。
「すみません…つい、興味深くなってしまい…」
「いえ、構いません。他にありますか?」
嗚呼、本当に黄金の聖職者様。怒りもしなければ咎めもしない。
申し訳なく、だが言葉に甘えて最後の質問をした。
「…では、聖職者様のお名前をお聞きしてもよろしいですか?場合によっては必要かな…と」
どんな場合だよと内心に突っ込みをいれる。殆ど、これも興味からきていたことに後から気づいた。
それでも彼は、どこか懐かしむように微笑みを浮かべ、言った。
「…そうですね、アルバです」
「…アルバ。どっかの古代の言葉で燈(ともしび)でしたっけ?」
「そうです」
「ではアルバさんに敬意を込め、敬礼!」
リシアは左手に拳を作り、右肩に乗せる。出来るだけ、左の二の腕が見えるように肘を右側に向け、一方右腕は脇でピンと伸ばす。
足はひらかずに、直線の棒のように立て、爪先はアルバの方向に。
その姿勢をつくったら今度は上半身を少し傾ける。これがメタトロニオス王国の正式な敬意の表し方だ。
「り、リシアースさん!?」
「あ、迷惑でしたか…?自分の感謝の表しだったんですが…」
恥と照れくささですぐさまリシアはその姿勢を崩すとアルバに背を向け、言った。
「話長くてすみませんでした!じゃっ、ちょこちょこ捜してみます!」
どこか逃げるように去っていくリシアを、血のように赤い目の青年は微笑んで見ていた。