本編
□魔術の都
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「鎌でもかけたのか?」
リシアが言うと、意味が分からないというように彼は首を傾げ、言う。
「は?何が?」
「だ、お前さっき俺のこと涙の神託者だって…」
「あぁ言った」
「じゃあ何でわかったんだ」
「ああ、それはな…」
と、彼は、引き込まれたのはこの目のせいか。と思う程綺麗な目の端を指差し、言う。
「俺には魔力(ルナート)が視えるんだ」
確かに涙の神託者の体には普通にしてても魔力が溢れているらしい。
それを発見し、涙の神託者の判別が出来るようになったのは最近だ。また、平民が買えるような値段でもなければ目に埋め込められる程の大きさでもない。
人並みの大きさの機械で判別出来ることを、この少年は目という人体からみたら小さな器官でやっているのか?
しかし、可笑しな話でもないのかもしれない。
聖職者のアルバも自分を涙の神託者と言い当てた。特化能力も併せて。
アルバは「私の身体が特殊なものでしてね」と言っていた。
だが、魔力が視えるとは言ってはいない。不確定な話だ。もしかしたら、視えるのかもしれないが。
少なくとも普通の人や涙の神託者は見えない。
彼らは異常なのかもしれない。
「へ、へぇ…そう」
「お前、信じたのか?」
「嘘なのか?」
「いや、本当」
白髪長髪は言う。リシアは、まあいいや、と割り切って言う。
「で、その涙の神託者で特化能力が"時空"の俺に何か用か?」
裏路地にだって人は通る。その中でリシアを連れ込み、脅迫紛いなことを言った。
リシアが一見して男性のようだからいいが。いやあまりよくないが。完全に女性っぽい姿をしていたら軽く犯罪だ。変態だ。
だから、特定の術が使える者に用があると考えた。
「よく察したな」
「まあな。別にいいけど、そのかわりその用件終わったら俺の用事にも付き合ってくれよな。おかげで予定が狂って大変なんだ」
嘘は言ってない。こんなに早くに見つかり、挙げ句そちらから声をかけてきたのだ。
何となく適当に書いた答案が全て正解で返ってきたように気味が悪い。
「分かった。じゃぁ単刀直入に言う」
よし、これを終えたらアルバの頼み事もこなせる。と、先ほどの気味悪さはどこえやら。リシアは意気揚々と話を聞いた。
「俺をメタトロニオス王国の王女に合わせろ」
こいつは変態だと確信した。