本編

□慈悲なかれ
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 シロガネは更に言う。

「けど、この水はカモフラージュでしかない。この井戸の底には隠し通路が存在するはずだ」
「そんな…馬鹿な……」

 驚愕した。それが本当なら、アルバ達はここを通ったということか。シロガネが言うように、『はず』という曖昧な確定ではあるが。

「なら、いこう!」
「いや、無理だ」

 シロガネは自分の白く長い髪の毛を一本抜くと、井戸に落とした。
 まだ髪の毛が髪の毛だと判別出来る距離で、それは赤い魔法陣に囲まれ、ボンッという小さな爆発音と共に灰になった。

「暗号タイプの術がかけられている。どうやって解いたのかわかんねえけど、これはアルバが付けたんじゃなくて前々から備わってるものだろう」
「桶に反応しないのは?」
「それはただ単に魔力を持たないからな。こういうのは、涙の神託者対策向けだから、普通の人とか、物は平気何だと思う」

 旅してると、こういうのを度々見るんだ。ともシロガネは言った。

「ははは…なんだよそれ」

ーー… 少なくても、俺は俺の友人を攫うようなやつを見過ごすつもりはないです。

 アルバの前で言った言葉が目の前を流れる。何が見過ごすつもりはない、だ。まんまと見過ごしてんじゃねえか。

 呆気なく、そしてまんまとリシアは友人を攫われてしまった。

執筆日 2012年1月15日
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