本編
□大地と生きる村
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リシアとシロガネは、オーウェルたちと宗教軍に気付かれないように、そっとまた川辺を歩き出した。焦りもあり、少し風を感じる程、足並みは早い。
『第四隊はハルワタートを出発し、オリエルに向かう』
その一言を最後に、シロガネが術を解除した。宗教軍の一つが聖地に向かうということは、何か重要な事柄を含んでいるような気がしてならない。
「追いつけないものだな、やっぱ」
「あぁ、そうだな」
リシアの言葉に、シロガネは答える。恐らく、ユーキは既にハルワタートを発ったのだろうか。
オリエルを目的地としてたものの、まだしばらくは近くにいたのではないかと言うことを知ると、どうにももどかしい気持ちになる。
ため池に着くと、背も高いがっちりとした体型の青年が船着き場で作業をしていた。シロガネが、マルス、と声をかけると青年は長い腕を左右に振って応える。
「悪いけど、今回も乗せてくれないか?」
「なんだ、また追われてんのかい?」
「今回はちょっと違う。むしろ追ってる側だ」
へぇ、とマルスと呼ばれた青年が言うと、リシアの方を向き、手招きをする。
「君もだろ?ささ、手伝って」
側にある背丈ほどに詰み上がった箱の意味を理解し、リシアは苦笑いを浮かべながら頷く。