本編

□天の涙
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 それでは行きましょうか、とアルバが立ち上がる。ウィズも荷物を持って立ち上がるが、リシアが言う。

「荷物、俺の別空間に置いておきましょうか?」
「精密機器。あまり魔力(ルナート)の力場に置きたくはない」

 そうウィズは断るが、すぐにシロガネが言う。

「敵来て荷物邪魔なっても困るから、入れといてもらえ。まぁ、リシアの別空間、かなり強い時空属性なのをいいことにやけに広くてごちゃついてるけど」
「悪かったな」

 リシアが言う。ウィズはしばらく考えた後、リシアに荷物を差し出す。

「…いいんですか?」
「……足手まといにはなりたくない。すまないが、よろしく頼む」

 分かりました、と言ってリシアはウィズの荷物を受けとる。

 だが、予想以上に中身が詰め込まれているのか、ズシリと重みを感じる。
 腹筋を使わなければ耐えられそうにない。すぐさまぽっかりと黒い口をあけた別空間を開き、その荷物を置く。
 ふぅ、と息がでる。

「そういえアルバさんは荷物持って…ないんですか?」

 言った途中で、まさかアルバと出会ったあの落とし穴に全て落としてきたのではないか、という考えが横切ったが、それは次のアルバの言葉により否定された。

「私も、微力ながらに時空属性使えるんです。時間を止めたりなどはできませんが、ちょっとした物であれば置ける程度の別空間がつくれるので」

 成る程、とリシアは納得する。アルバの横で、シロガネがジッと視るも、確かに、と言うだけであった。

 ウィズが宿のカウンターで手続きをしてる間に、エスターがこちらに歩み寄る。どうしたのかと聞くと、柔和な笑みを浮かべながら、リーダーに敬礼をね、と右手の甲を額に当てて答える。

 ウィズがこちらに戻ってくると、エスターに気付いたのか、間を開けてエスターと同じ礼をする。

「無事に戻られることを願います」
「こっちの台詞。ニールにも無理をするなと、伝えてくれ」

 そうしてウィズはリシアたちと共に宿を出た。リシアが、本当にこれでよかったのだろうか、とウィズ聞くも、分からないと首を振るだけであった。

執筆日 2015年10月15日
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