NOVEL3

□甘い痺れが支配する
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『爪痕』の栄純サイドの話










昨夜の情事で、覚えているのは余裕のなくなった御幸の顔。そして、







青道は言わずと知れた野球の古豪で、それは所属している俺らが一番わかっていて、休みは数えるほどしかないのだが。


「………痛い」

「栄純くん、何か言った?」

「え!?あ、いや何も!」


腰が痛い。
そんなこと言えるかっつーの!
春っちなら空気を読んでくれると思うけど、それが先輩たちに広まったら確実に俺は笑い者だ。そして絶対に監督に怒られる。

そんなの、絶対にいやだ!


昨日、がっついてきた御幸を止めることができずに流されるままにしてしまった。というかおそらく俺はアイツと付き合っている間は、おそらく拒否できないだろう。
でも部活はしなきゃならなくて(そりゃそうだ、俺たちは野球をしにここにいるのだから)ギシギシいっている腰を庇いながら、今日1日の部活が終了し、重い腰を抱えながらクリス先輩のメニューをこなし終わった。

ようやく汗を流せ、誰にも邪魔されない空間である風呂場に辿り着く。
広い湯船にも洗い場にも部員の姿はなく、監督もいないようだった。
浴場は湯気でいっぱいで、まるで霧だ。


「やっと一息つける……っ!」


湯槽に入るとどこもかしこも滲みるような気がして、眉を寄せた。

自分から見える位置にある胸の赤の花弁を擦ると、あのときの羞恥が込み上げてきた。

蚊に刺されて掻いたように赤く、血の滲むそれはこうしてアイツに会わないときには主張しない。


朝練のとき
学校で偶然見掛けたとき
ボールを捕ってもらうとき
人目を避けて自販機の前で会うとき
口づけをされるとき

じくじく、
じくじく、

鼓動をするように、あのときの感覚を思い出させるように存在を知らしめるのだ。


チャプン、と湯が跳ねる音が響く。

アノとき、御幸は痕を付けることを惜しまない。
わざと見せしめのように付けて、舐めあげる。

恥ずかしいと思うのに、なぜか嬉しい自分も居るのだ。

なんて矛盾したキモチ。


でもアイツとするのは不本意だが、気持ち良い。

自分はあの人が何だかんだ言いながら、大好きだから。

この痕も愛しく思えるんだ。

そんなこと、絶対本人には言ってやらないけれど!






昨夜の情事で、覚えているのは余裕のなくなった御幸の顔。そして、

そして、俺が爪をたてた所為で歪んだ顔。









遅くなりましたが、『爪痕』の栄純側のお話でした。
御幸が大好きなんだけど表に出さない(出せない)栄純が大好きです。
実は去年の初め頃に書いてあったんですが、夏休みを利用して書き直してみました。

お題は確かに恋だった様からお借りしました。


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